投稿

ラベル(貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡)が付いた投稿を表示しています

鳳凰の色

イメージ
皆様、お元気でお過ごしでしょうか? 今回は、「鳳凰の色」について取り上げます。   当館所蔵の唐時代の鏡に表された鳳凰の図像をいくつかみてみましょう。 貼銀鏡の鳳凰 貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡〈一部抜粋〉 (ちょうぎんときんそうじゅうそうほうもんはちりょうきょう) 図録 240 /唐/ 8 世紀 鋳造銅鏡の鳳凰 双鳳銜綬瑞鳥紋八花鏡〈一部抜粋〉 (そうほうかんじゅずいちょうもんはっかきょう) 図録 276/ 唐/ 8 世紀 平脱鏡の銀板の鳳凰 金銀平脱鳳凰紋鏡〈一部抜粋〉 (きんぎんへいだつほうおうもんきょう) 図録 293/ 唐/ 8 世紀 ※上掲3点の画像は鳳凰図像を見やすくするため、鳳凰周囲への着色などの画像調整等をおこなっています。 いずれも秋期企画展「鳳凰は鏡に舞う」にて展示する作品に表された鳳凰の図像です。 両翼を広げ、長く装飾的な尾羽(※)を翻した「舞鳳形(ぶほうけい)」と呼ばれる姿が見えます。 (※鳥類学的には上尾筒(じょうびとう)にあたる。) 鏡の鳳凰の図像は特に着色されず、基本的に銅鏡の地金の色や貼銀鏡(ちょうぎんきょう)の銀が金メッキされた金色、平脱鏡(へいだつきょう)の銀板の色といった金属の色になっています。   しかし、皆さんが「鳳凰」と聞いて過去に見てきた鳳凰を思い出したりしてみると、鳳凰はなんとなくカラフルな姿でイメージす る方は多いのではないでしょうか?   鳳凰はどんな色をしていたのか? 古代中国の地理書『山海経(せんがいきょう)』〈南山経 南次三経 丹穴之山〉に次の様に記されています。   「鳥有り。その状は雞(にわとり)のごとく、 五采(ごさい)にして文あり。 名を鳳凰と曰ふ。」(有鳥焉。其状如雞、五采而文。名曰鳳皇。)   鳳凰は「五彩(ごさい)」、五つの色で彩られて、文様・模様があるとされています。   この「五彩」とは、「五色(ごしき)」、五行説に基づく「青・赤・黄・白・黒」の5種類の色と一般的に言われています。ただ残念ながら『山海経』の説明には、どの部位がどの色といった記述はみられません。   この五色に彩られた理由については、『山海経』を研究する松田稔さんは「五彩が鳥の外観上の形...

瑠璃唐草という花

イメージ
 フラワーセンターのゲートをお入りいただくと、正面の花壇に小さな青い花がたくさん咲いています。その花の名はネモフィラ・メンジェシー(以下ネモフィラと略)。北アメリカ原産の一年草です。 ネモフィラ・メンジェシー ネモフィラはルリカラクサ(瑠璃唐草)という和名を持っています。花が青色(瑠璃色)をし、葉が唐草紋様に似ているから命名されたとか。 実は瑠璃も唐草も古代鏡と関連の深い言葉です。 「瑠璃」はここでは青色の一種を指しますが、ガラスの古名や青色の宝石のことでもあります。いずれも唐時代の宝飾鏡の紋様やや工芸品に取り入れられています。 「唐草」は、植物の茎(くき)や蔓(つる)が絡み合うように伸びる曲線紋様の総称で、そこに固有の花、葉、果実を配することもあり、その表現は多種多様です。エジプトやギリシャに起源があるとされ、その後仏教文化とも融合、中央アジアを経由して中国へ、そして日本にまで伝来している紋様です。 唐草のように見える?ネモフィラの葉 鏡の中の唐草紋様(下写真は部分拡大) 貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡(図244)より 古代中国鏡、中でも隋唐時代の銅鏡には唐草紋がさまざまな姿で表現されます。ネモフィラは唐草紋様のように茎がうねるように伸びてはいませんが、ここに示した銅鏡の唐草紋様にある3つや5つに裂けたような形の葉をもっています。それが唐草紋様のような名の由来でしょうか。 ネモフィラは暑さに弱く、見頃もあとわずか。フラワーセンターにお入りいただいた際は、ぜひご覧になって下さい。

サビの話

イメージ
梅雨の日が続きます。じめじめした湿度の高さは、文化財の大敵であるカビとサビの発生する原因にもなります。今回は、金属の大敵とされるサビについてのお話です。 千石コレクションの銅鏡は保存状態の良好なものが多いのですが、大部分の鏡に多少なりともサビが認められます。 よく「なぜ展示している鏡のサビをとらないのですか?」とのご質問をいただきます。 銅に発生するサビは、その色合いから 緑青 (ろくしょう)と呼ばれています。緑青はその色合いがいい味を出している、という見方もありますが、美しく細密な紋様がサビで隠れてしまうと台無しだ、との意見もあります。 蓮花柘榴紋八花鏡 (唐 図273) (9月22日まで展示中) 当館が緑青をそのまま残しているのには理由があります。 まず、緑青は良いサビだからです。 緑青はサビの原因の1つである酸素に触れる金属の表面にのみ発生します。そしてサビの皮膜によって金属内部を腐食から保護する効果があるのです。緑青に覆われた屋外の古い銅像が朽ちてしまわないのはこのためです。 次に、本来なら朽ちて残らない布などの有機物がサビに取り込まれることで、残っていることがあるためです。 貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡には、鈕に通した紐が残っています。 貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡 (唐 図244) 鈕の両側(矢印)に紐が遺存しています。 (現在展示していません) 他にも 鏡を覆っていた布などがサビで残された例もあります。 サビを取り去ると鏡の表面に残っている有機物の資料も損われてしまいます。緑青は良いサビなので、紐や布など微細な資料が含まれる可能性を考慮してあえて現状のまま残しているのです。 もちろん銅にとって悪いサビもあります。それが見つかると当然取り除くことになりますが、まずは温度・湿度を管理するなど、サビが現状よりも進行しない環境づくりにつとめています。

精緻な細工 貼銀鏡の魚々子紋(ななこもん)は2万5千個

イメージ
銅鏡には、宝飾鏡(ほうしょくきょう)とよばれる装飾性の強い一群があります。 千石コレクションの宝飾鏡には象嵌鏡、貼銀鏡、螺鈿鏡、平脱鏡の大きく4種類があります。 そのうち、貼銀鏡には魚々子紋(ななこもん)と呼ばれる細工があります。 貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡(唐 図録244、千石氏蔵) 貼銀鏡とは、銅鏡の背面(裏面)全面に銀の板を貼り付けたもので、当時の高級調度品である銀器の制作技法が取り入れられています。 銅鏡に銀板が貼り付けられた合わせ目 貼り付けられた銀の板には、あらかじめ紋様が打ち出されており、この紋様の隙間に魚々子紋がびっしりと打ち込まれています。 小円が魚々子紋 さて、この魚々子紋、先端が筒状になった工具を一つずつ打ち込むことでできていますが、工具先端の直径は0.5mm程度しかありません。 そして、その数をこの鏡で概算したところ、約2万5千個と算出できました。 若干の重複するところがあるものの、ほとんど隙間がなく整然と並ぶように打ち込まれた魚々子紋を見ていると、職人の緊迫した息づかいが聞こえてくるようです。