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今に生きる龍

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当館で開催中の企画展「龍 翔る!」では、古代中国の銅鏡などに表現された多様な龍の姿をご覧いただけます。 私たちのイメージする龍は古代中国で成立しました。その起源は5,000年以上前にさかのぼると考えられています。様々な動物の特徴を集め、長い体に四脚と角やひげをもつ龍のイメージが作り出され、時代とともにその姿は変化しています。皇帝の象徴となり、現在でも自国を龍になぞらえているほどです。 中国が周辺地域と交流する中で龍のイメージも銅鏡などの様々な文物を通して伝播し、それぞれの地域に受け入れられました。 日本には、約2,000年前の弥生時代に銅鏡に表現された四神の中の青龍として龍の姿が伝えられたと考えられています。 方格規矩四神鏡(図132 紀元1世紀)と細線で表現された青龍 (12月17日まで展示中) 日本人が受け入れた龍は、日本の思想・文化と融和し、その後近代に入ると西洋のドラゴンのイメージも加味されました。今日、日本人にとっての龍は、尊貴な存在ではなく昔話やコミック、ゲームなどを通して子供から大人まで身近に感じられる生き物です。 15世紀頃に成立した琉球王国も中国との国交の中で龍を受け入れ、国王の象徴としました。王宮である首里城内には様々な龍の工芸が施されていました。 10月31日に発生した首里城火災のニュースでは、焼失した正殿など主要な施設を見て、龍がいなくなった、と肩を落とす人がいました。その後焼失を免れた正殿前の大龍柱が「奇跡の龍柱」として注目されるのを見ると、龍が単に王国の象徴というよりも沖縄の人々にとって精神的なシンボルになっていたことがうかがえます。 中国の南に位置するブータンは別名「雷龍の国」と呼ばれています。その国王が平成23年に来日した際、訪問先の福島県相馬市の小学生に贈ったことばを最後に紹介しましょう。 「一人一人の中に龍はいる。その龍は何を食べているのか?皆の経験や体験を糧にして育っている。年を重ねるごとにその龍は強くなる。皆も自分の中にいる龍を大切に育んで下さい。」(外務省HPより)