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8月, 2020の投稿を表示しています

増築工事が進んでいます

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 残暑厳しい日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。 8月の終わり、古代鏡展示館のある加西市の周辺では、国内最高の気温を記録しています。このような酷暑の中でも当館の増築工事は進んでいます。 現在は、建物の基礎部分を掘り下げる工事の真っ最中。大型建設機械が1日中動いています。 機械で大きく掘り下げても、最終的に床面を水平に整える作業は人力で行っています。 岩盤を砕きながら3m以上も掘り下げた場所もあります。掘り下げていくと思わぬ場所から記録されていないパイプが見つかり、大慌てする場面も。開園44年、フラワーセンターの歴史を実感してしまいます。 そして、9月がスタート。企画展「美と微」、スポット展示「麒麟のいる鏡」は9月22日(火・祝)まで。まだご覧になっていない方はお急ぎ下さい。 会期中、工事の内容によっては、展示室内に騒音が伝わる場合があります。ご迷惑をおかけしますが、ご理解いただきますよう、お願いいたします。 今の展示が終了すると、 9月23日(水)から工事のため休館となります。ご注意下さい。

古墳(フラワーセンター内の歴史遺産4)

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 古代鏡展示館、県立フラワーセンターのある加西市には、全長約110mの前方後円墳である玉丘古墳をはじめ、約400基の古墳があります。 フラワーセンター内の古墳 (✰の場所が古代鏡展示館) 2009年国土地理院撮影 フラワーセンター園内にも山頂や尾根筋、丘陵の麓などに古墳が点在し、当館の裏山である飯盛山の遊歩道沿いでは4基の古墳を見ることができます。 飯盛山1号墳 (航空写真の➀) 飯盛山1号墳は、当館裏の飯盛山頂、展望台の北側にあります。写真ではただの茂みにしかみえませんが。 遊歩道沿いの古墳は、茂みの中にあるうえに規模が小さいので、古墳の調査に慣れていないと見逃してしまいそうです。 しかし、木々の葉が落ちる秋冬の時期には見通しがよくなり、古墳も見つけやすくなるでしょう。 豊倉7号墳 (航空写真の②) 豊倉7号墳は、当館の東側、しゃくなげ園付近にあります。花壇の工事中に石棺が発見されましたが、現在は埋め戻して保存してあります。 丘陵のふもとにある古墳は、豊倉7号墳だけです。しかし、大正時代に行われた加西郡の古墳調査では、「飯盛山麓円墳数個」と報告されています。本来は豊倉7号墳以外にも複数の古墳があったようです。 フラワーセンター内には、まだ知られていない古墳が眠っているのかもしれません。

旧海軍航空基地跡(フラワーセンター内の歴史遺産3)

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フラワーセンターの南東にある鶉野飛行場跡(旧海軍姫路航空隊基地跡)。最近では現存する戦争遺構の公開、戦闘機紫電改の原寸大模型やここを巣立った特攻隊員の記録とともに戦争遺跡として全国的に知れ渡り、フラワーセンターや古代鏡展示館とあわせて見学される方も多数いらっしゃいます。 今回はあまり知られていない航空基地跡のお話し。 1945年、本土決戦に備えて戦力を温存するため、航空基地の西側に航空機を隠す掩体とそれを結ぶ誘導路を建設する工事が急ピッチで行われました。平坦な台地上にある基地にとって飯盛山一帯は部隊を隠すのに適した周辺で唯一の場所。海軍はここに航空機を隠すだけでなく、丘陵の地下に指揮所や居住区など基地機能の一部を移転しようと考えたようです。工事は突貫で行われましたが、7月には米軍の空爆で死傷者もでたそうです。 そして8月15日、工事途中で終戦を迎え、本格的に基地として使われることはありませんでした。 1947年撮影 (白く帯状に延びる誘導路 矢印の位置が掩体(えんたい)) 2009年撮影 ※いずれも星(✰)の位置が当館 戦後31年を経て1976年に開園したフラワーセンターの敷地は、終戦間際に造成された誘導路などの跡を有効に利用しています。古代鏡展示館があるのは、1947年写真にある中央の掩体跡付近です。館の前の広い園路は、誘導路の痕跡を辛うじてとどめています。   防空壕跡(園路からの見学のみ可)     掩体跡(1947年写真左端の掩体)  亀ノ倉池岸の園路脇には掘削途中で放棄された防空壕跡が残っています。 唯一現存する掩体は、今日では職員駐車場として、敵機でなく来園者から車を隠すように利用されています。 今は四季の花の咲く平和な地も75年前、終戦間際の数ヶ月間、熱い戦いの場所だったのです。 【参考文献】 ・神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター 加西市教育委員会 編  『加西・鶉野飛行場跡(旧海軍航空隊基地)』 2011年 ・航空写真は国土地理院HPより引用して加工

ああ夏休み

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梅雨が明け、8月が始まりました。 フラワーセンターでは騒がしくセミが鳴いていますが、今年は虫かごを持った子供たちの姿をみかけません。まだ夏休みが始まっていない学校も多く、地域の夏まつりや花火大会もない、フラワーセンター恒例のイルミネーションもない、静かな夏が過ぎています。 当館で数多く展示している 海獣葡萄鏡 (かいじゅうぶどうきょう)は、古代中国の人々がシルクロードの彼方にある楽園をイメージしたと考えられる鏡です。ライオンをモデルにしたおめでたい獣である海獣、ブドウ唐草、鳥などが鏡背面にぎっしり描かれています。 海獣葡萄鏡(唐 図220) よく見るとチョウ、ハチ、トンボなどの昆虫が描かれた鏡もあります。 海獣葡萄鏡(唐 図226) 中には小さくセミが描かれた鏡も。(真上からやや左に横向きに描かれています) 現代の私たちが見ると、海獣葡萄鏡にはトンボ、セミ、ブドウなど夏の魅力が凝縮されているように思えます。 海獣葡萄鏡(図220)に描かれたトンボ 紋様のうち羽根のある鳥や昆虫は、飛ぶことで天に通じ、昆虫が幼虫→サナギ→成虫と変化する姿は不死や再生を象徴する、と考えられています。一方で、隠し絵的に描かれた姿は職人の遊び心だとの説も。個人的にはこの説が好きですが。 今回紹介した鏡は、古代鏡展示館正面奥の海獣葡萄鏡コーナーで展示しています。 唐の時代に数多く制作され、日本にも持ち込まれた海獣葡萄鏡。鏡背面の紋様をしっかり観察したら、何か発見があるかもしれません。