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増築工事だより

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夏の暑さ、台風の強風を乗り越え、古代鏡展示館の増築工事は順調に進んでいます。 建物の底にあたる部分がほぼできあがり、これからいよいよ建物の部分にとりかかります。 柱や壁になる部分にコンクリートを流し込むための型枠が建ち上がってきました。 型枠が建ち、足場が組み上がっています。工事は平面的な作業からから立体的な作業に移行してきました。 新しい建物の大きさも少しずつイメージできるようになってきました。

秋風 起こり・・・

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 台風の強風が過ぎ、セミの声が遠ざかり、秋の虫が鳴き始めました。 季節は着実に進んでいます。 今回は秋にちなんだ鏡です。 異体字銘帯鏡(清銀鏡) (図105 前漢) 現在展示中の 異体字銘帯鏡 には「秋風起」で始まる三言と七言の句を組み合わせた詩が表されています。この詩を読み下すと 秋風起こり、心は甚(まこと)に悲しむ。 時どき君を念(おも)い、立ちては徘徊す。 常に客居し、中国に游(ゆう)を為す可(べ)からざるを思い、侍して来たり帰らん。 清らかな銀と銅の華を以て鏡を為(つく)り、衣服を照らし察(み)て容貌を観(み)る。 糸と組(くみひも)は雑(まじ)われり。 文中にある「中国」とは国の中心=都の意味。当時の都長安に住む女性が、遠くへ旅立ち、帰らない夫を案じる詩。現代風に言えば「世界の中心で愛を想う」でしょうか。 この鏡が制作されたのは、紀元前2世紀の終わり頃、第7代皇帝 武帝 の時代です。国政が安定し、積極的な国土の拡張が進められた時代でした。 国土の拡張の裏には、地方行政を担う役人として、また兵士として辺境の地へ派遣された多く男たちがいました。 暑い夏から涼やかな秋への季節の移ろい、都に残された妻と遠方へ旅立った夫、たて糸とよこ糸にたとえた男女の仲など対比が際立つこの詩に当時の女性は共感し、鏡の銘文として採用されたのでしょう。 今回紹介した鏡は、訳文を添えて現在展示中です。漢字をデザイン化しているので読みにくいのですが、文字を追いながら前漢の女性の思いを感じて下さい。