人らしく生きる
三楽鏡 (唐 図録286) 八花鏡で鈕をはさんで2人の人物、上に三行の傍題「孔夫子 問曰答 栄啓竒」、下に1本の樹木が表現されています。 左の人物は中国の思想家として知られる 孔子 、右の人物は 栄啓竒 (えいけいき)。『列子』天瑞篇に記された二人の問答が題材です。この故事は日本にも伝わり、『今昔物語』や『宇治拾遺物語』にも記されるほど有名なもの。シンプルな表現でも唐の時代の人々は内容を理解できたようです。 弟子を連れ泰山に遊ぶ孔子はみすぼらしい老人、栄啓竒に出会います。 孔子が人生の楽しみを問うたのに対し、栄啓竒は「万物の中で最も貴い人として生まれたこと、人の中でも貴い男子として生まれたこと、90歳の長寿を得たこと。」と答えました。これが鏡名となる「三楽」の由来です。 現代社会では、2つめの楽しみは「アウト!」の判定。男尊女卑として完全に否定されていますが、当時は当然のことと受け入れられていました。 一方で、秩序厳しい時代に、貧しくとも俗世を離れて自由に生きる栄啓竒の姿は好ましい人物として受け取られていたようです。 価値観は時代とともに変化しますが、人が人らしく生きていくことはいつの時代でも不変です。