さかずき

 商周時代の青銅礼器を展示する企画展「儀礼の器 商周青銅器」の会期もあとわずかとなりました。今回は展示作品の中から(こ)を紹介します。


獣面紋 觚(じゅうめんもん こ)
千石唯司氏所蔵
企画展にて展示中

「觚」は日常では見ない漢字ですが、訓読では「さかずき」と読み、文字通り酒を飲むための器です。
商(殷)時代後期の觚は、背が高く、細身で口がラッパのように大きく開いています。

商時代の王らが行う儀礼の中で飲酒は重要なものとされ、「容れる器」、「温める器」、「飲む器」など酒に関わる様々な器が発達し、觚もその中の1つでした。

儀礼狩猟紋壺(戦国時代:館蔵品)に描かれた
古代中国の儀礼の中で行われる宴の様子
中央の人物が觚に似た器を手にしています


酒はたっぷりと入りそうに見えますが、実は内部は上げ底。細い胴部分(最初の写真の矢印付近)に底があり、器の下半は脚台部ですので、入る酒の量は多くありません。
上から見た獣面紋觚の内部

器の形はバランスが悪そうで、展示する時に倒れないか心配していましたが、手にするとすしりと重く、意外に安定しています。

細い胴部と大きく開く口。これを傾けると中の酒をこぼしそうで、飲むのに苦労するであろうことが想像できます。当時の儀礼には細かな決まり事があったと言われていますが、觚にどのような酒を入れ、どのように飲んでいたのかわかっていません。儀礼の参列者は決まり事に従って苦労しながらも酒を口にしていたのでしょうか。

觚は後の時代にその形が日本に伝わり、今日の花器に似た形のものを見ることができます。

企画展「儀礼の器 商周青銅器」は3月12日(日)まで。ぜひお越しください。