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5月, 2021の投稿を表示しています

新しい展示室

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 緊急事態宣言発出による休館に始まった5月も終わり。古代鏡展示館が心機一転スタートして半月余りが過ぎました。例年より早い梅雨入りにもかかわらず、多数の方々にご来館いただいています。感謝申し上げます。 1年にわたる増築工事によって従来の展示室(第1展示室)に新しい展示室(第2展示室)が加わりました。2つの展示室でご覧いただける作品の数も約2倍になりました。建物の外観はすでにご報告しましたので、今回は展示室の中を紹介します。 第1展示室 一見これまでどおりの展示室に見えますが。 展示内容を一新しました。「青銅の時代」をテーマとし、三国時代以前の銅鏡だけではない青銅器などの作品をご覧いただけます。 企画展「青銅の響き」  開催中 夏ー商から春秋戦国時代の青銅の楽器などを展示しています。(9/12まで) 第1展示室と新しい第2展示を結ぶ廊下 薄暗くて怖がるお子さんもいました。突き当たり にはお出迎えの作品が。 第2展示室 新しい展示室は第1展示室と対照的に時代の華やかさを象徴した明るい雰囲気。「高級宝石店みたい!」とのご感想もありました。 「唐王朝の精華」をテーマに隋唐時代の金銀銅器、俑(よう)などの作品を展示。隋唐時代の銅鏡はこちらでご覧いただけます。 当ブログでは、これから展示作品も紹介してまいります。 新しい古代鏡展示館、どうぞよろしくお願いいたします。

謎の顔

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  当館で新しく展示している商(殷)~春秋戦国時代の青銅器の表面には、奇怪な顔が表現されているものがあります。 獣面紋鐃 (どう) 商~西周 「青銅の響き」にて展示中 当館では「 獣面紋 」と呼んでいますが、古くから 饕餮 (とうてつ) 紋 とも呼ばれています。複雑な紋様ですが、じっと観察すると先端が巻いた羊のような角、にらみつけるような大きな目が印象的な顔が読み取れます。 獣面紋觚 (こ) 商 (部分拡大) 「古代中国金工の歴史」にて展示中 この紋様の正体は明らかでありません。 饕餮とは、想像上の大食いの怪物のこと。怪物が表現されているのは、魔物をも食らい尽くすという意味があるのでしょうか。また、それとは逆に天上の最高神の姿とする説もあります。 いずれにしてもこの顔は、大きな目で魔物を見極め、威嚇する存在であることは間違いないようで、魔除けの役割から青銅器の主要な紋様として用いられているようです。 当館第1展示室ではこの他にも様々な獣面紋のある青銅器を展示しています。謎の紋様とじっくり向き合ってみませんか。

酒の力

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政治を「まつりごと」とも言いますが、古代中国においては、祭りと政治は一体。商(殷)の時代、儀式の中で王は天や祖先などの神々に伺いをたて、政治の決定を行いました。 王が神と交わる手段が酒。酒により酩酊することで王は神と交信したようです。 そのためか商の時代の青銅器は、儀式で用いる酒に関する器が発達します。 乳釘紋爵 (しゃく):酒を温める器 素紋斝 (か):酒を温める器 獣面紋觚 (こ):酒を飲む器 いずれも新展示室オープン記念展「中国王朝の粋美」にて展示します。 商王朝最後の王、 紂 (ちゅう)は暴君とも贅沢の限りを尽くしたとも言われています。これに由来する故事が「 酒池肉林 」。商は西周に倒され、王朝が交代します。西周の三代目の王は「私が聞いたところでは、前の王朝が天に見放されたのは酒に耽ったから」と言ったそうです。 商滅亡の経緯が歴史的事実かは明らかでありませんが、少なくとも西周王朝の時代になると儀式の内容に変化がみられ、酒に関わる青銅器は徐々に姿を消していくことになります。