酒の力

政治を「まつりごと」とも言いますが、古代中国においては、祭りと政治は一体。商(殷)の時代、儀式の中で王は天や祖先などの神々に伺いをたて、政治の決定を行いました。

王が神と交わる手段が酒。酒により酩酊することで王は神と交信したようです。

そのためか商の時代の青銅器は、儀式で用いる酒に関する器が発達します。



乳釘紋爵(しゃく):酒を温める器

素紋斝(か):酒を温める器

獣面紋觚(こ):酒を飲む器

いずれも新展示室オープン記念展「中国王朝の粋美」にて展示します。

商王朝最後の王、(ちゅう)は暴君とも贅沢の限りを尽くしたとも言われています。これに由来する故事が「酒池肉林」。商は西周に倒され、王朝が交代します。西周の三代目の王は「私が聞いたところでは、前の王朝が天に見放されたのは酒に耽ったから」と言ったそうです。

商滅亡の経緯が歴史的事実かは明らかでありませんが、少なくとも西周王朝の時代になると儀式の内容に変化がみられ、酒に関わる青銅器は徐々に姿を消していくことになります。