女と男と鏡① 結婚で用いられた鏡<後漢・唐>

古代の中国では、結婚に鏡が用いられることがありました。

①夫婦が仲良くなる鏡

ピョンヤン市 貞柏里13号墓 出土「尚方作」獣帯鏡<後漢(25~220年)>
(参考文献①より引用)

この鏡には、以下の銘文が記されています。
「(前略)
 嫁入門時 殊大良。
 夫婦相重、甚於威央。
(後略)」

(嫁、門に入る時、殊に大いに良(よろ)し。
夫婦は相い重んじ、威央(=鴛鴦:おしどり)より甚だし)

この鏡をもって嫁入りすると、とっても良く、夫婦は仲良く、
その様は夫婦仲のよい「おしどり」を上回るほどだそうです。

こんな鏡を1枚欲しいと思うときがありますが、
皆さんはいかがでしょうか?(笑)

②両家が結ばれ、子孫繁栄の鏡

<江西省 南昌丁(なんしょうてい)1号墓出土 獣帯鏡<後漢(25~220年)>

この鏡には、以下の銘文が記されています。
「良月吉日、造此倚物。
 二姓合好、堅如膠漆。
 女貞男聖、子孫充實。
(後略)」

(良き月の吉日に、この奇物を造る。
 二姓は好しみを合わせ、堅きこと膠(にかわ)や漆(うるし)のごとし。
 女は貞、男は聖、子孫は充実せん。)

吉日に造った、このめずらしく、不思議な鏡は
接着剤のように堅く両家を結びつける。
女性は堅く誠実で、
男性は知徳にすぐれ、賢く、
子孫は繁栄するだろう。

少子化対策にぴったりの鏡です。

③鏡が登場する唐の詩

王建が詠った詩「老婦嘆鏡」<唐(~830)>

「嫁時明鏡老猶在。
 黄金鏤画双鳳背。
(後略)

「黄金鏤画」は金銀平脱技法の鏡(下写真参考)、
「双鳳背」は2匹が一組となった鳳が背面に表された鏡のこと。

こうした、双鳳鏡が嫁入り道具として用いられたことがわかります。

<参考>
千石コレクション
金銀平脱 鳳凰紋鏡(図録293)
(金銀の板を紋様の形に切り抜き、鏡背面に漆で埋め込んでいる)

同上の鳳凰紋

千石コレクション 双鳳瑞花紋八花鏡(立体画像 図録272)

鳳凰が向かい合う双鳳(同上)

ちなみに、我が家の結婚では、嫁入り道具を入れるとき、
鏡(鏡台)を一番に入れました。
なにやら、「そうするもの」だそうです。
来館者の皆さんに機会があるとお聞きするのですが、
結構、同じようなことをされていました。

日本に残るこのような風習がどこからはじまったのか。
その謎は、古代の中国にまでさかのぼるのかもしれません。

<参考文献>
①岡村秀典 2017年『鏡が語る古代史』岩波書店
②孔祥星・劉一曼(訳 高倉洋彰・田崎博之・渡辺芳郎)
 1991年『図説 中国古代銅鏡史』中国書店