七夕と鏡

もうすぐやってくる7月7日は七夕。牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)が天の川を渡り、年に一度合うことが許されている日です。

このとき、天の川に橋をかけ、二人の出会いを助けるのが「鵲(じゃく)」、すなわちカササギです。

この伝説は中国のものですが、古代の日本でも知られていたようで、百人一首の「中納言家持」が詠んだ
「かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける」
というの歌からもうかがえます。

このカササギが表された中国鏡があります。
「月宮双鵲銜綬龍濤紋八花鏡(げっきゅうそうじゃくかんじゅりゅうとうもんはっかきょう)」

名称をわかりやすくすると、

①<月宮>・・・・月(ウサギ・カエル・桂樹)の紋様、
②<双鵲銜綬>・・向かい合うカササギが、鈴付きの紐(綬)をくわえている紋様
③<龍濤>・・・・龍が波しぶきを上げて飛翔する紋様
 の3種の主紋様が表された、
④<八花鏡>・・・外形が八枚の花弁のような形をした鏡

ということになります。


カササギは男女の仲をとりもつ瑞鳥と考えられていたようで、鏡の紋様としては、特に唐時代に流行しました。左右に向かい合う対鳥形式は幸せな恋愛や夫婦生活を願ったものとされています。

中国六朝時代(約1,700~1,400年前)の歌には、鏡は女性の持ち物で、女性が鏡の前で遠くにいる夫や恋人を思う、というのが一つの定形であったようです。
この鏡も女性が恋愛成就を願って所持していたのかもしれません。

女性が恋愛を成就し、夫婦円満に過ごすため、鏡に顔を映しながら化粧をした想いは、今の時代よりもずっと強く、切実であったことでしょう。

ちなみに、この七夕の「7月7日」ですが、梅雨の頃で星もなかなか見られません。しかし、本来は旧暦である太陰太陽暦の7月7日のことなので、現在使われている明治6年以降の暦の「7月7日」とは季節が異なっています。

国立天文台によりますと、「月齢およそ6の月が南西の空に輝く夏の夜」にあたり、伝統的七夕の日の定義は、
「二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目」
だそうです。

結局のところ、年によって異なっており、2017年の今年は「8月28日」だそうです。結構ずれています。

このように旧暦でいきますと、この日の宵空には、七夕の星々が空高く昇り、上弦前の月は早く沈んで空は暗く、晴天の確率も現行の暦よりは高くなり、星が観察しやすいそうです。

この伝統的七夕の日に、ライトダウンキャンペーンを行っている町もあるそうです。環境にも優しくロマンチックなキャンペーンですね。

今年の伝統的七夕は8月28日(月)。この日に空を見上げ、天の川に牽牛と織女、それからその二人を結びつけるカササギの姿を思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

<参考文献>
・中村潤子 1999 『鏡の力 鏡の想い』 大巧社
・廣川守 2011 「鏡にみる文様」『村上コレクション受贈記念 中国の古鏡』根津美術館
・国立天文台HP