冬の夜に
暦の上では「雨水」を過ぎましたが、寒さの厳しい日が続きます。
朝起きると空気の乾燥でのどが痛いことはありませんか?
のどの不快感は古代中国の人々も現代人も同じだったようです。
ミニチュアの唾壺(だこ) (南北朝時代:6世紀頃)
高さ6.5㎝ 第2展示室にて展示中
口が大きく開き、胴部が扁平な形のこの壺は唾壺(だこ)と呼ばれています。文字通り唾(つば)や痰(たん)をこの中に吐くためのもので、漏らさず受けるように口が開いているのでしょう。このような形の唾壺は後漢時代(紀元2世紀)頃に出現し、青銅製のほかに陶製のものもあったようです。
日本でも一昔前には公衆衛生を目的とした痰壺(たんつぼ)というものが街角などにありましたが、唾壺は寝室に置かれて私的に用いるものでした。大陸の冬は寒さも厳しく、空気も乾燥します。のどの痛みで目が覚めても、唾や痰を吐くために寝床から離れることは避けたいのでしょう。漢時代の高貴な人物には唾壺を取り扱う使用人が付いていたそうです。
当館所蔵の唾壺は、墳墓に副葬するために制作されたミニチュアで実用品ではありません。しかし、わざわざ死後の世界にまで持ち込むほど実生活に欠かすことのできないものだったといえるでしょう。
響銅ミニチュア明器 唾壺