鉄の鏡

 古代の鏡は青銅を素材とする銅鏡がほとんどですが、数少ないながら鉄の鏡が後漢から三国時代以降制作されます。

千石コレクションの中には数面の鉄鏡があり、そのうちの1面を現在展示しています。

鉄鏡は鉄を素材とするため、約2千年の時間の中で劣化が進み、錆によって精細な紋様が失われているものもあります。現在も良好な状態で見ることができる数少ない作品です。

金象嵌八鳳鉄鏡(三国)径12.0㎝
現在第1展示室にて展示中

糸状の精細な金象嵌が良好に残存しています。
一見して紋様を読み取るのは難しいと思われますので、ポイントを紹介しましょう。

鈕から外方向(写真の対角線方向)へ宝珠のような形の四葉紋を配し、鏡背面を4つに区画しています。
四葉紋の間には下から時計回りに子孫繁栄を意味する「長宜子孫」の銘文があります。鏡を手にすることで得られる御利益で、鏡の銘文としては一般的なもの。

四葉紋で4つに区画された中には2羽1組、計8羽の鳳凰を配しています。
遺存状態が悪いですが、胸をつきあわせ、クチバシをふれあうように向かい合います。

八鳳紋鏡(三国 図録171)
同じモチーフの銅鏡です。この鏡を参考に図像を読み解いて下さい。
現在第1展示室にて展示中



鉄鏡は、『三国志』の魏の英雄曹操(そうそう)が所持していたことでも知られ、皇帝など限られた階層のみが所持できました。さらにその中でも所持できる大きさ、象嵌の有無や種類が身分によって定められていたようです。
展示作品は、皇帝クラスが手にした鏡の1/2程度の大きさですが、全面に金象嵌を施していることから、王朝の中で高い地位にあった者が所持していたと推定できます。



金象嵌八鳳鉄鏡は9月12日(日)まで展示しています。ぜひこの機会にご観覧下さい。