カササギ
猛暑の夏が去り、季節は秋。夜空を見るのによい季節になりました。夜空の天頂近くにはベガ、アルタイル、デネブの3星で構成される「夏の大三角」がまだよく見えます。このうちベガとアルタイルは七夕伝説の織女(織姫)と牽牛(彦星)にあたり、その間に天の川が広がっています。 昨年もブログに登場しましたが、月宮双鵲龍濤紋八花鏡は七夕伝説に関連する鏡です。 月宮双鵲龍濤紋八花鏡(唐:図録番号290) 鈕の左右で綬をくわえる鵲(カササギ)は、七夕の夜に天の川に橋を架け織女と牽牛の間を取り持ったことから、男女の仲をとりもつ瑞鳥(おめでたい鳥)とも言われています。 ところで、カササギは、ヨーロッパから東アジアまで北半球に広く生息する鳥ですが、もともと日本にはいなかったそうで、『魏志倭人伝』には日本にいない鳥獣の1つとして記載があります。 奈良時代初頭に編纂された『播磨国風土記』には、讃容郡中川の里(現兵庫県佐用郡佐用町末廣付近)の船引山に「鵲住めり」とあり、日本における生息についての最古の記録です。「韓國の烏」と記されているのですが、実際のカササギと生態が異なること、奈良時代に「鵲」をどう読んでいたのかが明らかでないことから別の鳥である可能性があり、古代の兵庫県にカササギがいた!と断言できないのは残念です。 日本で生息が確認できるのは近世の初め頃。朝鮮半島から北部九州へ人間が連れてきたとも、海を渡って飛んできたとも言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。謎多きカササギですが、中国や韓国では瑞鳥として今日も親しまれています。日本の主な生息地である佐賀県では「カチガラス」とも呼ばれ「勝ち」に通じる縁起の良い鳥とされています。もし、旅行などで佐賀県へ行く機会があり、長い尾で腹や羽根の先端が白い鳥がいたら、カササギかもしれません。見つけたらなにか良いことがあるかもしれませんよ。 月宮双鵲龍濤紋八花鏡は9月14日(金)開幕の秋季企画展「唐王朝の彩り 宮廷の栄華をうつす金銀銅」にて展示します。ぜひご覧下さい。