トラ?のいる鏡

2月も半ばを過ぎ、寒さの中にも春を感じるようになりました。当館も春の企画展開幕にむけて準備を進めています。スポット展示「干支 寅」の会期もあと1ヶ月足らずとなりました。今回もトラにちなんだ銅鏡を紹介します。

狩猟紋鏡は、鏡背に2人の武人と2頭の猛獣を交互に配置し、対峙する姿が描かれています。細かな地紋様の特徴から秦代の銅鏡と考えられ、類似した銅鏡が長江中流域、湖北省の墳墓から出土しています。

狩猟紋鏡(図録71 秦 紀元前3世紀)
第1展示室にて展示中


表されている猛獣はネコ科で間違いないのですが、体の縞模様はトラよりもヒョウのように見えます。この時代、トラもヒョウも中国に広く生息していました。

武人は上半身裸、裸足で剣と盾を手にして猛獣に立ち向かっています。武人が手にする中国式銅剣も狩猟紋鏡とあわせて展示しています。


金緑松石象嵌剣(戦国時代)
第1展示室にて展示中

狩猟は、今日では害獣の駆除や趣味・スポーツとして行われることが多いのですが、かつては軍事訓練の性格ももっていました。また、王が人間世界を取り巻く自然に挑む神聖な儀式でもあったのです。トラは中国では百獣の王とされており、人間の王が戦うのに相応しい猛獣だったのでしょう。