虎が吠えると
古代、虎が吠えると風が起こる、と信じられていました。 「虎嘯風生(こしょうふうしょう)」という言葉は 中国の南北朝時代(439年~589年)、北朝の歴史を記した『北史』に語源があり、優れた人物が奮起することの例えに用いられる言葉。虎の鳴き声は天地を動かすほどの力があると考えられていました。 虎と対比される動物に龍があり、「雲龍風虎」という言葉もあります。 龍は雲とともに、虎は風とともに現れることから、優れた2人の登場が相乗効果をもたらす ことを意味します。 龍と雲の組み合わせは定番のモチーフであり、鏡の中でも雲龍紋として表されます。 月宮双鵲銜綬龍濤紋八花鏡 (唐 図290)より 第2展示室にて展示中 一方、虎は白虎や十二支として鏡に表現されますが、虎そのものをモチーフにした鏡はありません。虎は優れた動物と考えられていましたが、風という目にみえない現象を表現することは難しかったのでしょうか。 画像鏡 (後漢 図151)より 第1展示室 スポット展示「干支 寅」 にて展示中 この虎は青龍に対する白虎。「虎嘯風生」より時代は遡りますが、ユーモラスな表情で駆ける姿、なびく毛に風を感じることができます。 龍が起す雲、虎が起す風。いずれも雨を呼ぶ自然現象です。雨は大地に恵みを施し、過ぎると災いをもたらします。 災害が頻発する昨今、今年こそ虎の威を借りて穏やかな1年になるよう祈ります。