南極老人を知っていますか?

秋分の日、せっかくの連休なのに天候不順で残念です。しかし、残暑も「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり和らいで過ごしやすい気候になってきました。

古代中国、漢の時代の皇帝は、秋分の頃に天体観察をしていたそうです。皇帝が観測していたのは、南極老人星という星。ご存じですか?
聞き慣れない名前の星ですが、この星は天下太平の時には姿を現し、世情不安の時には見えない、と言われていました。皇帝はこの星を見つけて天下太平の世を祈るのでした。
南極老人星の正体は、りゅうこつ座のカノープスという星。カノープスは太陽を含めて全天で3番目に明るい恒星なのです。ただしカノープスは南半球では天高く明るく輝いているのですが、北半球では南の地(水)平線すれすれ、大気の影響を受けて暗く赤い星として辛うじて見えます。
北半球にある中国から見えにくい南極老人星ですが、別名「寿星」とも言われ、見つけると幸福と長寿、そして繁盛を得ると信じられて広く信仰を集めていました。

この南極老人星を象徴化した神が南極老人です。重列式神獣鏡(後漢)の最上段には南極老人、とされる神が四神のうち南を司る朱雀とともに表現されています。
重列式神獣鏡(図141)
朱雀(左)と南極老人とされる神(右)


幸福、長寿、繁盛をもたらす南極老人は、日本にも伝わり、七福神として親しまれる神々のうち福禄寿や寿老人のモデルになった、とも言われています。

南極老人星(カノープス)は、条件がよければ日本国内でも広い地域で見ることができるそうです。これから空気が澄んでくる季節、目を凝らして南極老人星を探してみませんか。