「戌年」はなぜ「犬年」ではないのか?

あけまして、おめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。

今年は戌年です。テレビでは年末から犬の映像や話題が取り上げられています。
ところで、なぜ、戌年は「犬年」ではなくて、「戌年」と書くのでしょうか?
こんなことを疑問に思うのは、心の純粋な子供か、私のような偏屈な大人ぐらいなのかも知れません。

この疑問を解くヒントは「方格規矩四神鏡」と「パルメット唐草十二支紋鏡」にありました。

方格規矩四神鏡は約2,000年前の鏡で、「戌」を含めた十二支の文字が中央の正方形の周りに並んでいます(写真1)。

(写真)
(中央部分:X線画像を白黒反転して加工)
写真1 方格規矩四神鏡(新)

実は、この頃には十二支に動物の概念はなく、方位を示す座標として使われていました。
ちなみに「戌」は「ジュツ」と呼んで西北西に位置しています。

ところが、その600年後の「パルメット唐草十二支紋鏡」には、犬を含めた動物で表された十二支が巡っています(写真2)。
写真2 パルメット唐草十二支紋鏡(唐)

後漢(約1,900年前)に書かれた『論衡』(ろんこう)には、十二支に今と変わらない動物が割り当てられていることから、どうやら、この頃までには十二支の動物が完成、普及し、隋、唐の時代になると十二支は動物の姿で盛んに表されるようになったようです。

日本では、十二支のことを「干支(えと)」と呼んで12年周期の年を示す時に使いますが、その際、文字は動物の意味を持たない、本来の「戌」を使うため、「犬年」ではなく、「戌年」と表記しているのです。

※この2面の鏡は現在展示中です。(チラシ