蹴鞠紋鏡②-1 鏡の中の「鞠」(1)鞠の表現

 暑い日が続いていますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。

 8月も令和4年度夏季スポット展示『蹴鞠紋鏡 鏡の裏に“けまり”で遊ぶ』開催中です。

 今回は、蹴鞠紋鏡に表された「鞠」についてさらにスポットを当てて、中国の鞠についてみていきたいと思います。

◆蹴鞠紋鏡の鞠の表現

 本鏡の鞠は、蹴鞠に興じる男女の間で、女性の蹴り上げた足先に表されています(図1)。

図1 蹴鞠紋鏡に表された鞠を蹴る女性像

 鞠の表現を見ると、鞠は球形で、その表面には、中央部に円、そこから放射状に伸びる5本の棒線が凹線で表現されているのが確認できます(図2)。
※前回の記事で取り上げた他の類例の写真を見る限り、FIFA Museum所蔵鏡では5本の凹線は見えますが、中国国家博物館・湖南省博物館所蔵鏡については摩耗により不明瞭なため確認できず、表現があったのか不明です。

図2 蹴鞠紋鏡の鞠の表現

 これらの凹線は鞠に用いられた部品の継ぎ目、おそらく革製のパネルの継ぎ目を表しているとみられます。反対側も同様の継ぎ目があるとすれば、球体部は5枚接ぎの舟形多円錐のパネルとそれらの両端を留める円形パネル2枚の合計7枚の部品を組み合わせて作る、紙風船のような球形の鞠が推測されます(図3)。

図3 鞠の球体部の部品推測展開図


 では、蹴鞠紋鏡の鞠の表現は、中国の鞠のなかでどのように位置付けられるでしょうか?
 
 次回の更新では、はじめに古代中国の鞠がどのようなものだったのかみていきたいと思います。


 夏季スポット展示「蹴鞠紋鏡」は9月11日(火)まで開催中です。(※水曜日休館)

 是非この期間に実物をご覧下さい。(K)