高松塚古墳発掘50年

1972年、奈良県明日香村の高松塚古墳で男女の群像や四神などの極彩色壁画が発見されました。この発見から本年3月で50年を迎えました。高松塚古墳と言えばこの壁画を連想しますが、出土品の中に1面の海獣葡萄鏡がありました。

出土した海獣葡萄鏡には10面を超える同型鏡(1つの原型を型取りし、それを鋳型にして鋳造された鏡)が知られ、そのうちの1面が千石コレクションにあります。

海獣葡萄鏡(唐 図221)
(高松塚古墳同型鏡)
第2展示室にて展示中

また、別の同型鏡が出土した陝西省西安市にある独弧思貞墓(どっこしていぼ:唐時代の高級官僚である独弧思貞の墓)には神功2年(西暦698年)銘の墓誌が伴い、この海獣葡萄鏡の年代を示しています。

7世紀末~8世紀初め頃と推定される高松塚古墳の築造年代は、遺構や出土遺物などから導き出されたものですが、海獣葡萄鏡はこの年代を考える1つの根拠になっています。

千石コレクションの高松塚古墳同型鏡は、中国で制作され、用いられたと推定されますが、残念ながら所有者の情報は全くありません。しかし、他の同型鏡の出土例から唐の都長安付近の高貴な人物が所有していた可能性が考えられます。

展示する海獣葡萄鏡は、銀色の地金も残るほど保存状態も良好。楽園の図像とも呼ばれる紋様の細部までじっくりとご覧ください。