四神シリーズ③ 玄武岩と四神

皆さんは「玄武岩」という岩石名をご存じでしょうか?

ごく一般的な岩石で、理科の教科書でも登場するメジャーな岩石です。

さて、この岩石名には、なぜ四神の「玄武」という名が付いているのでしょう?
その謎を解く鍵は、兵庫県北部、豊岡市にある国天然記念物「玄武洞」にあります。

玄武洞とは、玄武岩を採掘してできた人工の洞穴ですが、その岩石は柱状に規則正しく割れており(柱状節理)、柱の断面形は5~6角形のものが多くなっています。
明治17(1884)年、東京帝国大学の小藤文次郎博士が、岩石に名前を付けるにあたり、「玄武洞」の名前にちなんで、「玄武岩」と名付けました。

つまり、「玄武岩」が採掘できるから「玄武洞」になったのではなく、「玄武洞」にある岩石に「玄武岩」という名前を付けたのです。
なんと、「玄武洞」の名前の方が先だったのです。

では、そもそも「玄武洞」という名前はどこからきたのでしょう?

それは、江戸時代後期の儒者、柴野栗山(しばのりつざん)が文化4(1807)年に命名したことに因ります。栗山は、「玄武洞」の特徴である5~6角形の紋様が亀の甲羅にある亀甲紋(きっこうもん)を思わせ、柱状節理(柱状の割れ)が大きく曲がりくねる様子が蛇のようなので、亀と蛇が絡まり合う「玄武」を連想して名付けた、と言われています。


ちなみに、この玄武洞一帯には、玄武洞以外に、青龍洞、白虎洞、南朱雀洞、北朱雀洞があり、四神の名前がそろっています(朱雀は南北2つあります)。しかし、それぞれの位置関係は四神の東西南北の配置とは異なり、バラバラです。
これら玄武洞以外の洞名は、大正時代以降、「玄武洞」の名前に合わせて観光用に命名されたものです。


その後も「玄武洞」は、
・大正15(1926)年、地磁気の方向が今と反対の南を向くことの発見につながる。
・昭和6(1931)年、国の天然記念物に指定される。
・昭和30(1955)年、山陰海岸国定公園に指定される。
・平成20(2008)年、日本ジオパークに認定される。
・平成22(2010)年、世界ジオパークネットワーク加盟に認定される。
と、次々に価値が認められていきました。

玄武洞の近くには、城崎温泉、コウノトリの郷公園、出石そば、などなど、楽しいものがいっぱいあります。
一度、お出かけになって、柴野栗山が連想した「玄武」を体感されてはいかがでしょうか?

<参考>山陰海岸ジオパーク”ジオサイトガイドブック” 平成26年3月31日第2版 p31
    玄武洞に設置された看板 豊岡市