銅鏡の基礎②「銅鏡は何でできている?」

銅鏡は銅の合金でできています。

その比率は時代や地域によって異なっていますが、基本は銅、錫(スズ)の合金です。
この銅とスズの合金のことを「青銅(Bronze)」というので、正しくは「銅鏡」ではなく「青銅鏡」ということになります。

この合金の種類と比率については、正倉院宝物を中心に分析されたデータがあります。

それによると、正倉院の銅鏡は

主成分として「銅、スズ、鉛、ヒ素」、
微量成分として「鉄、ニッケル、銀、アンチモン、ビスマスなど」

があり、
主成分である元素の科学組成から

A群鏡:銅約70%、スズ約25%、鉛約5%
B群鏡:銅約80%、スズ約20%、ヒ素1~3%
C群鏡:銅、スズを主成分とし、鉛、ヒ素を少量含むが、成分比にまとまりがない。

の3つのグループに分けられるそうです。

そして、それぞれを他の銅鏡と比較検討した結果、
A群鏡=唐鏡
B群鏡=日本国産官営工房製鏡
C群鏡=日本国産私営工房製鏡
であろうと推定されています。

 
正倉院鏡の主要成分元素組成

しかも、このA群鏡の成分比は前漢時代(約2,200年前)の鏡からほぼ変わっておらず、極めて理にかなっていたようです。

それは、
①姿見であるため、できるだけスズの比率を多くし、明るい白銅色に仕上げる必要があったこと
②細かな紋様まで表現できること
③金属を溶かす温度をできるだけ低くすること
そして何よりも
④制作時に壊れないこと
⑤完成後も壊れにくいこと

こうした条件をクリアーするのがA群鏡の成分比であり、特にこの成分比を「中国鏡の標準的化学組成」と呼ばれています。

前回の「銅鏡の基礎①」でお伝えしましたように、表面は鏡として白銅色に仕上がっています。
ということは、裏側も同じ白銅色だったはずです。

発掘調査の出土品とはずいぶんイメージが違いますね。

<参考文献>
成瀬正和 1999「正倉院鏡を中心とした唐式鏡の化学的調査」『古代の鏡』日本の美術393 杉山洋編 至文堂