精緻な細工 貼銀鏡の魚々子紋(ななこもん)は2万5千個
銅鏡には、宝飾鏡(ほうしょくきょう)とよばれる装飾性の強い一群があります。 千石コレクションの宝飾鏡には象嵌鏡、貼銀鏡、螺鈿鏡、平脱鏡の大きく4種類があります。 そのうち、貼銀鏡には魚々子紋(ななこもん)と呼ばれる細工があります。 貼銀鍍金双獣双鳳紋八稜鏡(唐 図録244、千石氏蔵) 貼銀鏡とは、銅鏡の背面(裏面)全面に銀の板を貼り付けたもので、当時の高級調度品である銀器の制作技法が取り入れられています。 銅鏡に銀板が貼り付けられた合わせ目 貼り付けられた銀の板には、あらかじめ紋様が打ち出されており、この紋様の隙間に魚々子紋がびっしりと打ち込まれています。 小円が魚々子紋 さて、この魚々子紋、先端が筒状になった工具を一つずつ打ち込むことでできていますが、工具先端の直径は0.5mm程度しかありません。 そして、その数をこの鏡で概算したところ、約2万5千個と算出できました。 若干の重複するところがあるものの、ほとんど隙間がなく整然と並ぶように打ち込まれた魚々子紋を見ていると、職人の緊迫した息づかいが聞こえてくるようです。