兄弟の鏡
古代鏡展示館では、38面の海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)を所蔵しています。
海獣葡萄鏡は、葡萄唐草紋が全面に巡る中に獣の紋様を配し、周縁部にも獣や鳥、昆虫などを置いています。唐時代の7世紀を中心に流行し、数多く制作されました。そして飛鳥・奈良時代の日本にも数多くもたらされ、奈良県の正倉院や春日大社などには古くに伝来した作品が残されています。
海獣葡萄鏡は、同型鏡が多くあることでも知られています。
同型鏡とは、同じ原型から型どりして作られた複数の鋳型を使い制作された鏡です。
人間にたとえると、親が同じ子供たち、兄弟のような関係の鏡といえるでしょう。
なお、原型に完成品の銅鏡を用いることがあり、この場合「踏み返し」と呼んでいます。海獣葡萄鏡は「踏み返し」により8世紀以降の時代にも数多く制作されています。
同型鏡の概念
当館ではただ今常設展示の中で、「兄弟の鏡」と題して2組の海獣葡萄鏡を並べて展示しています。
今回はそのうちの1組を紹介しましょう。
海獣葡萄鏡
上:径13.1㎝ 重875g【216】
下:径13.2㎝ 重836g【217】
第2展示室にて展示中
2面を見比べると、地金の色や鋳造の仕上がり具合に違いがあるとはいえ、紋様の配置や個々の紋様の形態は全く同じです。直径はわずか0.1㎝の差しかありません。重さは39gの差がありますが、これは鏡面を仕上げる際に地金を磨いた度合いの差によるものでしょう。
なお、この2面の他に海外に少なくとももう1面の兄弟が存在することが確認されています。
この機会にご来館いただき、ぜひ兄弟の海獣葡萄鏡を見比べてみてください。