胡人俑

 俑(よう)とは、死者に供えるために墓に副葬された器物のうち、人や動物などを象ったものです。

今回は当館で展示している唐時代の俑の中から、胡人俑(こじんよう)を紹介します。

胡人とはいわゆる漢民族から見た異民族の呼称として用いられますが、シルクロードの交易が盛んになった唐時代には主にソグド人を示すようになります。

ソグド人は、カスピ海東側の中央アジア(現在のウズベキスタン付近)に居住したイラン(ペルシャ)系の農耕・商業民族で、シルクロードの中間付近を拠点とすることから、その経済活動にも深く関わります。

加彩胡人俑(高45.9㎝)
第2展示室にて展示中

彫りの深い顔立ちで豊かな髭をたくわえ、頭には先が尖った帽子をかぶり、胸元が開いた胡服(こふく)を着用しています。その姿は10世紀に完成した唐の歴史書である『旧唐書(くとうじょ)』の「深目高鼻、多鬚」とされる記載そのものです。


手前:加彩女子俑 奥:加彩胡人俑

中国の女性を象った女子俑(手前)の顔つきと見比べると、顔の彫りの深さ、鼻の高さが特徴的であることがおわかり頂けると思います。

展示しているような胡人俑の類例は多く、副葬品としてかなりの数が用いられたようです。ソグド人はシルクロードを通じて行われた東西交易で重要な役割を果たし、西方の文物を中国へもたらします。また都周辺に居住する者も多く、エキゾチックな容貌や風習は人々の関心を高めたことでしょう。これらのことから墓への副葬品として好まれたのかもしれません。

また、胡人俑はフタコブラクダを模した駱駝俑とセットで副葬されることが多く、展示している胡人俑も右手をガッツポーズの様にする姿は、本来は駱駝の手綱を握っていたのだと考えています。

ソグド人の相棒である駱駝については、別の機会に紹介します。