色なき季節に

 立冬を過ぎ、暦は冬へと変りましたが、まだ木々や草花が色づき、色彩豊かな秋が感じられます。

ところで、秋は色がないという言葉、ご存じでしょうか。

この言葉、平安時代の悲恋を詠んだ和歌

吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思いけるかな   『古今和歌六帖』

に由来するそうです。

「色なきもの」から派生し、後の時代の和歌や俳句の世界では木々や草花を揺らす秋風を素風(そふう)、さらに情感を込めた言い方で色無き風とも呼ばれています。

先に示した和歌を詠んだ歌人の紀友則(きのとものり)は古代中国の五行思想に関する知識から「色なきもの」を発想したようです。

五行思想とは、万物は木・火・土・金・水の5つの要素で構成され、それぞれが巡り、影響し合うことで変化が起こるという考え。

季節:春・夏・土用・秋・冬

色 :青・赤・貴・白・黒

方位:東・南・中央・西・北

というようにあらゆる事象に五行思想の考え方が当てはめられ、関連づけられました。秋は色の白と結びつくことから、色がないと言ったようです。余談ながら詩人北原白秋の名もさかのぼればこの五行思想の考えに由来します。

銅鏡に表わされる四神も五行思想にもとづいており、瑞獣に白色と西の方位を配当したものが白虎です。

白虎
(四神十二支紋鏡 図184 隋-唐 )
第2展示室にて展示中

県立フラワーセンターでは、紅葉や秋の花がまだ楽しめます。古代鏡展示館の作品と併せて秋の彩りをお楽しみください。