採石場跡(フラワーセンター内の歴史遺産5)

 加西市内では、各所で石塔や石仏、古墳から掘り出された石棺材がみられます。播磨地域の石材は、高砂市を中心とする竜山(たつやま)が知られていますが、加西市内でも竜山石と同じ凝灰岩の石材を産出していました。

市内のよく知られた石材産出地は、フラワーセンターと市街地の間の丘陵一帯から産出する高室(たかむろ)、加西市南部の山塊から産出する(おさ)があります。古墳時代中期頃に高室石、それから少し時代が下り長石の産出がはじまりました。

このシリーズに何度も登場する飯盛山は岩山。中世から近世の時期に石材を産出し、一帯は三ノ谷採石場跡として遺跡登録されています。また、フラワーセンター大温室の裏山にも採石場跡が確認されています。飯盛山で産出する石材は、長石と同系統の火山礫凝灰岩と呼ばれるものです。

では、ここで産出した石材はどこへ運ばれたのでしょうか。

フラワーセンター東側の平野部に広がる長塚(ながつか)遺跡を発掘調査したところ、室町時代~戦国時代(16世紀)に石臼や五輪塔、石仏を製作した石材加工場跡が見つかりました。

三ノ谷採石場跡(A)と長塚遺跡(B)の位置
●が古代鏡展示館(国土地理院1980年撮影の航空写真を加工)
長塚遺跡から出土した石製品
『加西市史第七巻 史料編Ⅰ 考古』から引用


岩石の特徴から、加工した石材は飯盛山付近で産出したことがわかっています。採石場と石材加工場が隣り合うことから、加西市内の石材加工の歴史を研究するうえで重要な遺跡と評価されています。


参考文献

加西市史編さん委員会編『加西市史第七巻 史料編Ⅰ 考古』加西市 2010年