立春

立春を迎え、フラワーセンターでは梅も開花しはじめました。それでもまだ2月、冬まっただ中です。
今冬は異常な暖冬。古代鏡展示館は、兵庫県の内陸部に所在しますが、雪が一度ちらついただけで、氷や霜柱すら見ません。冬物衣料や家電が売れない、スキー場が運営できない一方で野菜が安くなるなど暖冬は我々の社会や暮らしに大きく影響します。
古代の人々も気象には関心が高かったようです。

以前にも紹介した方格規矩四神鏡には「王氏作・・」で始まる七文字を1単位とした銘文があり、4行目に「風雨時節五穀熟」とあります。
方格規矩四神鏡(新 図録番号132)
丸囲みの部分に「風雨時節五穀熟」の句があります

「風雨時節五穀熟」とは、季節が順調に巡り、五穀豊穣になる、という意味。
この鏡の制作者である王氏とは西暦8年に新王朝を建国した王莽(おうもう)のこと。皇后の親族として台頭して皇帝にまでのぼりつめた人物です。
古代中国では、君主の政治に対して天は自然現象などで応えると信じられていました。王莽は自らをアピールする手段として鏡を制作させ、そこに自画自賛の銘を記したのです。
王莽の徳政に天が応えて順調な季節の変化をもたらします。その結果、農事が滞りなく行われて豊作となり、天下の安定や人々の幸福がかなったというもの。
実際には、王莽の政治は一定の支持を得たものの、混乱を招き短命の王朝となりました。混乱は人口の大幅な減少を招いたといわれています。

今回紹介した鏡は企画展「龍 翔る!」にて展示中です。
拡大鏡を貸し出ししていますので、細かな紋様とともに銘文もご覧ください。