中国鏡の中の人面鳥② 「迦陵頻伽(かりょうびんが)」

前回、人面鳥の「玄女(げんにょ)」についてお話しましたが、今回はもう一つの「迦陵頻伽(かりょうびんが)」についてです。

迦陵頻伽鳳紋鏡(千石コレクション192 隋~唐)

「迦陵頻伽」とは、仏教で登場する想像上の鳥(?)で、サンスクリット語のkalavinkaに漢字を当てはめたものです。
鳩摩羅什(くまらじゅう)という名前の僧が402年に漢訳した『阿弥陀経』、406年に漢訳した『妙法蓮華経』などに登場します。

鳥のもつ美しい姿と、心地よい鳴き声の象徴として生み出され、極楽浄土に住み、非常に美しい声で鳴くといわれています。その美声によって仏法を説くともいわれています。

日本には、遅くとも8世紀までには伝えられ、絵画(浄土図、涅槃図など)や、彫刻(仏像の光背の中など)、工芸、建築(天井や欄間透彫など)、芸能(雅楽など)といった様々なジャンルに取り入れられました。
たとえば、寺院(京都知恩院三門楼上など)の天井画や、正倉院北倉宝物の螺鈿紫檀琵琶(らでんしたんのびわ)、浄土曼荼羅などに表されているほか、雅楽には「迦陵頻」という演目があります。

仏教に関係する鳥なので、お寺で見かけることがあります。
ご参拝の際に、ちょっと探してみてはいかがでしょうか?
思わぬところにひっそりといらっしゃるかもしれません。
心をしずかにすれば、その美しい声を聞くことができるかも。

ちなみに兵庫県では姫路市書写山円教寺大講堂の天井にいらっしゃるそうですよ。
(まだ、私もお会いできていませんので、機会をうかがっています。)

<参考文献>藤木言一郎 2006年『日本の美術』6 №481 至文堂