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夏は鏡の季節!

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見学のお客様からよく「鏡はどのように作るのですか?」との質問をいただきます。 鏡は、紋様を施した土や石の鋳型に、「湯」と呼ばれる高温で赤く溶けた青銅(銅を主成分とし、スズや鉛を含んだ合金)を流し込む 鋳造 という方法で制作されます。さらに「湯」が冷えて固まった後に鋳型から取り出して整形、鏡面を丁寧に研磨することで白銀色に輝く鏡が完成します。 古代中国では、万物の生成は、木・火・土・金・水の5つの気が影響するという 五行思想 が信じられていました。銅鏡はその成分が「金」であり、制作には「火」が大きく関わります。「火」は季節は夏、色は赤を象徴し、「金」は季節は秋、色は白を象徴します。 鏡づくりの工程は暑い夏から秋への季節の移ろいにも重ね合わせられ、五行思想に基づくことでその内面に不思議な力が秘められていると考えたのです。 以前にも紹介しましたが、千石コレクションには「五月五日造」と記された鏡があります。五月は旧暦で夏=「火」に通じ、五(火)が重なることで鋳造に適した縁起の良い日を意味します。 八瑞獣紋鏡(図195)と「五月五日造」銘 千石コレクションにはありませんが、銅鏡の銘には制作日を「五月丙午」と表すことがあります。 「火」に通じる五に加えて干支で日を表した「丙午」(へいご・ひのえうま)の「丙」と「午」も「火」を象徴します。火の気が重なりその相乗効果が期待できる、鋳造を行うのに縁起のよい日と考えたのです。ただし、「五月五日」も「五月丙午」も鏡に秘められた性質をアピールする意味が強く、実際にその日に制作したのかはわかりません。 余談ながら、日本では丙午の年は火事が多いとか、この年に生まれた人は気性が荒いとの迷信がありました。これは古代中国の五行思想を誤って理解したためです。 梅雨も明け、いよいよ夏本番!暑い夏こそ鏡づくりに最適な季節です。 古代鏡展示館では、8月に低温で溶ける金属を用いてミニチュア(径約5.5㎝)の鏡をつくる古代体験講座「金属で鏡をつくろう」を開催します。夏の思い出にいかがでしょうか。