四神シリーズ⑤ 四神のはじまり

四神はいつ頃から登場するのでしょうか?

1987年、中国の河南省濮陽県の西水玻遺跡で貝殻を並べて描かれた絵が発見されました。
新石器時代中期(仰韶文化:紀元前4,000年頃)のお墓にともなうもので、頭を南に向けた遺体の両脇に絵が表現されており、右側(東側)は龍、左側(西側)は虎と考えられています。
また、足元(北側)には、骨と貝でヒシャク形を表した絵も見られます。
(濮陽市文物管理委員会等 1988「河南濮陽西水玻遺址発掘簡報」『文物』第三期)

この貝殻絵の「龍」と「虎」は、四神の「青龍」、「白虎」と同じ方位に配置されています。ヒシャク形の絵は北斗七星を表すともいわれています。
ただし、南北の朱雀、玄武は見られません。

戦国時代(紀元前5世紀頃)の曾侯乙墓(そうこういつぼ)出土の漆塗りの衣装箱にも、青龍と白虎が描かれており、二十八宿が示す方位とほぼ一致しています。ただし、朱雀、玄武は見られません。
描く場所がなかったため省かれたともいわれていますが、まだそろっていなかったのかも知れません。
曾侯乙墓出土の漆塗衣裳箱
(湖北省博物館編1989『曾侯乙墓』文物出版社)

文献を見ますと、『淮南子(えなんじ)』(紀元前139年に献上)に登場します。
東方木也・・・其獣蒼(青)龍・・・
南方火也・・・其獣朱雀・・・
中央土也・・・其獣黄龍・・・
西方金也・・・其獣白虎・・・
北方水也・・・其獣玄武・・・

四神シリーズ④「四神ってなに?」にご紹介した五行や方位、色との対応も全く一致しています。

前漢の武帝の茂陵に関連する建築物に使用された塼(レンガ)や軒丸瓦の瓦当にも四神がそろって表現されていますので、このころまでには四神の顔ぶれが整ったようですが、固定化するようになるのは紀元後になってからのようです。

<参考文献>
林巳奈夫 1989『漢代の神神』臨川書店
林巳奈夫 1993『龍の話 図像から説く謎』中央公論社
来村多加史 2005『キトラ古墳は語る』日本放送出版協会
岡村秀典 2017『鏡が語る古代史』岩波書店