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【方格規矩鏡の図像(その1)】ライオンとトラ

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2023年の終わりに近づいてきていますが、みなさまお元気でお過ごしでしょうか? 古代鏡展示館では令和5年度秋季企画展『方格規矩鏡 ―鏡に広がる天円地方の宇宙―』を開催中です。(令和6年3月10日まで) (※2023年12月20日~2024年1月2日まで休館していますので来館年末年始ご来館の際はご注意ください。) 1.気になる方格規矩鏡の図像表現 今回テーマとする図像 さて、今回企画展に関連してブログで取り上げるのは、次の方格規矩鏡に表された動物の図像についてです。 ■写真1-1:鍍金方格規矩獣紋鏡(図録119)〈 当館蔵〉 前漢/紀元前1世紀、直径10.9 cm ・重さ243g 現在展示中の鍍金方格規矩獣紋鏡(図録119)は、外区には紋様がなく、内区の方格規矩紋部分を除く主紋様部分に鍍金(ときん=金めっき)が施されています。 その中で気になる図像は次の部分の動物の図像表現です。 ■写真1-2:図録119に表された気になる動物図像 図像はすべて細い線で施され、右側の四足の動物が、左側で左前足を挙げる四足の動物の方向を振り返っている様子が表されています。 右側の動物は、頭部は丸く、眼は切れ長、口元をやや「へ」の字状に結び、丸まった背中と首には2本1セットの筋で表した縞模様があり、尻尾は先端が細くなっています。 一方、左側の動物は、頭と首が反るように立ち上がり、前に少し突き出た顔には逆C字形の丸い眼と、「へ」の字状に結んだ口元、その後には首と顔の境界となる2本の皺があります。また顔より上の頭頂部はやや膨らみ、そこから首筋にかけて縞模様状の表現が施されています。体部には4つの珠点があり、腹部には皺または縞状の表現、内側に反った背中は立ち上がった首と相まって背丈が高く見えるようになっています。また、足先は3本の尖った爪または指になっており、左前足を持ち上げています。そして尻尾の先端は毛が広がるように3本の細い線が端に向かって開いていくように表現されてます。 当初この図像は、2頭のトラが顔を向かい合わせている表現だと思っていましたが、どうやら違うようです。 2.図像表現を読み解くヒント1 それに気づくヒントとなったのは、岡村秀典さんの鏡の研究による指摘です。 まず研究で示された鏡の図とその解説した文章を引用します。 ■図1:ライオンをあらわした前1世紀末の鏡(岡村2017より引

儀礼狩猟紋壺の世界

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 春秋戦国時代(紀元前8~紀元前3世紀)、青銅器は儀礼に用いる特別な器から実用的なシンプルなものに変化していきますが、一方で装飾に工夫をこらした器も出現します。 壺 (こ)は水や酒を貯える器で、春秋戦国時代頃に現れます。今回紹介する壺は卵のような形の体部外面に人物や動物の姿がところ狭しと表現されています。なお、写真の反対側の面もご覧いただいている面と同じ絵が表現されています。 儀礼狩猟紋壺(戦国時代) 当館蔵 高32.2㎝ 第1展示室「金工の歴史」にて展示中 壺は紋様帯によって上下4段に区画され、それぞれの区画に狩猟や儀礼の場面が表現されています。 1段目(壺の頸の部分)には女性が桑の木の葉を摘む場面と男性が建物から的をめがけて弓を射る場面が表現されています。これらは生産活動や競技ではなく、神に関わる儀式として行われるものです。 最上段に表わされた情景 桑の葉を摘む場面(左側)と弓を射る場面(右側) 2段目(壺の肩の部分)には2階建ての建物があります。2階では食器を並べるなど宴会の準備、1階では梁(?)から吊した 鐘 (しょう:青銅製の打楽器)や 磬 (けい:石製の打楽器)などを演奏する場面が表現されています。また掲載の写真では見えない部分に射包み(いぐるみ)や弋射(よくしゃ)と呼ばれる紐を結びつけた矢を放ち、飛ぶ鳥をからめとる狩猟の場面も表現されています。 2段目に表わされた場面の一部 宴会の準備(上側)と楽器の演奏(下側) 参考:表現された楽器の鐘 獣面紋鐘 (戦国時代)当館蔵 *現在展示していません 3・4段目(壺の胴部)も狩猟の場面ですが、様々な動物と武器をもつ人物が入り乱れ、剣を手に大型動物に果敢に挑む者、動物に追われたり倒された者などが描かれています。 登場する動物を見てみると、実在するシカなどのほか、角のある奇妙な動物がおり、さらに写真では見えない部分に魚も表現されています。この場面は現実の世界ではない、神話的な世界を表現しているのかもしれません。 3段目に表わされた狩猟の場面 参考:人物が手にするのと同形の剣 金緑松石象嵌剣 (戦国時代)当館蔵 長53.2㎝ 第1展示室「金工の歴史」にて展示中 これらの紋様は、あらかじめ紋様部分がくぼむように鋳造し、そこに青銅とは異なる色調の銅などの金属をはめ込む象嵌(ぞうがん)の技法が用いられています。これまで知ら

令和5年度秋季企画展 「方格規矩鏡 ―鏡に広がる天円地方の宇宙―」が開幕しました。

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 みなさま、お元気でお過ごしでしょうか?  現在、古代鏡展示館では、 令和5年度 秋季企画展 「方格規矩鏡 ―鏡に広がる天円地方の宇宙―」 が開幕中です。 ※企画展の詳細はコチラの展示館ホームページ 秋季企画展開幕中の古代鏡展示館入り口 展示館の外観。黄色と紫のバナーが目印です。 当館が所蔵する千石コレクションには、方格規矩鏡が多数あり、今回初めて一堂に展示します。(※期間中に一部展示替えします。) 方格規矩鏡のみの企画展は、当館ならではのニッチな展示といえるでしょう。 下の画像は当館が所蔵する方格規矩鏡の中でも、紋様がはっきり見える方格規矩四神鏡です。※少し明るく画像調整しています。 方格規矩四神鏡(図録131) そのクリアな図像を是非実物で確認していただきたいです! そして、上の写真と同じ鏡ではないですが、今回の企画展のチラシ・ポスターを大きく飾る方格規矩四神鏡については下の画像のように細かく展示解説しています。※銘文の解説もしています。 方格規矩四神鏡の方格規矩紋と様々な図像 上の画像の黄・緑・青・赤色塗り部分が方格規矩紋です。 また、いろんな瑞獣や仙人たちの図像が表されています。 四神のようなメジャーな図像もありますが、まだまだ何を表しているのかよく分かっていない瑞獣たちもいっぱい、謎だらけの方格規矩四神鏡です。 (この画像は、当館や考古博物館本館で配布している博物館NEWS32号にも掲載しています。) 方格規矩鏡は、日本の弥生・古墳時代の墳墓からも出土していますが、そこに表された方格規矩紋は、日本の文化にはあまり馴染みがありません。 幾何学的で、不思議な不思議な方格規矩紋・・・。 方格規矩紋にはどんな意味があるのでしょうか? 本展示では、鏡に表されている方格規矩紋(の謎)を中心に、図像、銘文などに焦点をあてつつ、方格規矩鏡の様態やその関連文化について紹介しています。 そして、実は! 方格規矩鏡の関連文化として、方格規矩紋にまつわる珍しい作品を今回借用して展示することができました。 人物形鎮の展示状況 六博(りくはく)という、双六(すごろく)に似た古代中国のボードゲームに用いられたと考えられている、人物の形をした鎮(=重り)です。 方格規矩紋とどんな関係があるのでしょうか? もちろんインターネットで調べたらすぐにわかるのですが、 担当学芸員としては、是非展示

胡人俑

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 俑(よう)とは、死者に供えるために墓に副葬された器物のうち、人や動物などを象ったものです。 今回は当館で展示している唐時代の俑の中から、 胡人俑 (こじんよう)を紹介します。 胡人とはいわゆる漢民族から見た異民族の呼称として用いられますが、シルクロードの交易が盛んになった唐時代には主に ソグド人 を示すようになります。 ソグド人は、カスピ海東側の中央アジア(現在のウズベキスタン付近)に居住したイラン(ペルシャ)系の農耕・商業民族で、シルクロードの中間付近を拠点とすることから、その経済活動にも深く関わります。 加彩胡人俑 (高45.9㎝) 第2展示室にて展示中 彫りの深い顔立ちで豊かな髭をたくわえ、頭には先が尖った帽子をかぶり、胸元が開いた胡服(こふく)を着用しています。その姿は10世紀に完成した唐の歴史書である『旧唐書(くとうじょ)』の「深目高鼻、多鬚」とされる記載そのものです。 手前:加彩女子俑 奥:加彩胡人俑 中国の女性を象った女子俑(手前)の顔つきと見比べると、顔の彫りの深さ、鼻の高さが特徴的であることがおわかり頂けると思います。 展示しているような胡人俑の類例は多く、副葬品としてかなりの数が用いられたようです。ソグド人はシルクロードを通じて行われた東西交易で重要な役割を果たし、西方の文物を中国へもたらします。また都周辺に居住する者も多く、エキゾチックな容貌や風習は人々の関心を高めたことでしょう。これらのことから墓への副葬品として好まれたのかもしれません。 また、胡人俑はフタコブラクダを模した駱駝俑とセットで副葬されることが多く、展示している胡人俑も右手をガッツポーズの様にする姿は、本来は駱駝の手綱を握っていたのだと考えています。 ソグド人の相棒である駱駝については、別の機会に紹介します。

ニンニク頭の壺

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 中国最初の統一王朝である秦。その起源は紀元前9世紀頃まで遡ります。西の辺境の小国から戦国時代に台頭し、強国となっていきます。この秦の領域内で登場したとされる青銅器の1つに 蒜頭壺 (さんとうこ)があります。 蒜頭壺 当館蔵 第1展示室「金工の歴史」で展示中 扁平な胴部と長く延びる頸、口縁部以外に装飾がない、シンプルで実用を重視した壺です。口縁部に表わされた造形がニンニク(大蒜)のような形であることから、この名で呼ばれています。 口縁部の造形 蒜頭壺は、戦国時代後期に登場し、秦が強国を倒して領土を拡張するのにあわせて分布域を広げていきました。秦は天下統一からわずか15年で滅亡しますが、この壺は前漢時代に入っても使用されました。 当館第1展示室の「金工の歴史」コーナーでは、商時代~漢時代までの青銅器の変遷を展示しています。ぜひご来館のうえご覧下さい。

漢字の成り立ち

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 私たちが日常的に用いている漢字。 その中には商(殷)時代の占いに用いる骨や甲羅に刻まれた文字(甲骨文字)、青銅器に表わされた文字(金文)などにルーツをもち、発達してきたものがあります。 今回は、秋季企画展「儀礼の器 商周青銅器」にちなんで、青銅器にまつわる漢字の成り立ちを紹介しましょう。 獣面紋尊 (じゅうめんもん そん) 千石唯司氏所蔵 企画展展示中 この写真の青銅礼器の形から連想する漢字はありませんか? その漢字は 酉 張りのある胴部から頸がのび、大きく開く口、胴部の下に高台が付く器形を象っています。 壺に入る液体に由来して、「 氵 :さんずい」がつき 酒 の字 へと派生します。 本器を含め、酒を容れる壺の総称である 尊 という字は「 酉 」の字の下に「 寸 」の字が付いています。 「寸」の字の部分は人の手を表わしているそうで、「尊」の字は両手で酒壺を持ち、神前に捧げる動作を象っているそうです。青銅礼器に由来して成立した「尊」の字は、今日も「たっとぶ」など敬いや上位のものという意味で用いられます。 ちなみに「尊」の字の酉の上に飛び出す2画の部分は、口から広がる酒の香りを表わしているとも言われています。 企画展「儀礼の器 商周青銅器」は3月12日(日)までです。ぜひご覧下さい。 参考文献 奈良国立博物館編『坂本コレクション 中国古代青銅器』2002年 奈良国立博物館

さかずき

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 商周時代の青銅礼器を展示する企画展「儀礼の器 商周青銅器」の会期もあとわずかとなりました。今回は展示作品の中から 觚 (こ)を紹介します。 獣面紋 觚(じゅうめんもん こ) 千石唯司氏所蔵 企画展にて展示中 「觚」は日常では見ない漢字ですが、訓読では「さかずき」と読み、文字通り酒を飲むための器です。 商(殷)時代後期の觚は、背が高く、細身で口がラッパのように大きく開いています。 商時代の王らが行う儀礼の中で飲酒は重要なものとされ、「容れる器」、「温める器」、「飲む器」など酒に関わる様々な器が発達し、觚もその中の1つでした。 儀礼狩猟紋壺(戦国時代:館蔵品)に描かれた 古代中国の儀礼の中で行われる宴の様子 中央の人物が觚に似た器を手にしています 酒はたっぷりと入りそうに見えますが、実は内部は上げ底。細い胴部分(最初の写真の矢印付近)に底があり、器の下半は脚台部ですので、入る酒の量は多くありません。 上から見た獣面紋觚の内部 器の形はバランスが悪そうで、展示する時に倒れないか心配していましたが、手にするとすしりと重く、意外に安定しています。 細い胴部と大きく開く口。これを傾けると中の酒をこぼしそうで、飲むのに苦労するであろうことが想像できます。当時の儀礼には細かな決まり事があったと言われていますが、觚にどのような酒を入れ、どのように飲んでいたのかわかっていません。儀礼の参列者は決まり事に従って苦労しながらも酒を口にしていたのでしょうか。 觚は後の時代にその形が日本に伝わり、今日の花器に似た形のものを見ることができます。 企画展「儀礼の器 商周青銅器」は3月12日(日)まで。ぜひお越しください。 。

当館所蔵の鏡が舞台「キングダム」のプログラムに!

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2023 年 2 月 5 日から帝国劇場を皮切りに 5 月 11 日まで全国4劇場で上演中の舞台『キングダム』(原作:原泰久(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載) 脚本:藤沢文翁 演出:山田和也 音楽: KOHTA YAMAMOTO )のプログラム( A4 版)の表紙一面に 当館所蔵の古代中国鏡「龍紋透彫鏡」がデザイン されています。   この鏡は 紀元前 4 世紀の戦国時代 のものです。鏡背と鏡面を別々に鋳造して組み合わせた「二重体鏡」という鏡で、龍が胴と尾をつる草のようにくねらせた意匠になっています。   この鏡は、ただいま 当館「古代鏡展示館」(兵庫県加西市)で展示中 です。是非実物をご覧ください。     なお画像は当館ホームページでもご覧いただけます。↓ 龍紋透彫鏡 | 兵庫県立考古博物館加西分館 龍紋透彫鏡の X 線画像   ※白黒反転   舞台「キングダム」のパンフレットと 公演の詳細については、東宝株式会社のホームページからご確認ください。

はじまりの1面

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 すべてのものごとにははじまりがあります。 300面を超える銅鏡からなる千石コレクションのはじまりも1面の銅鏡からでした。 美術品蒐集家である千石唯司氏が最初に入手された銅鏡は、瑞鳥紋八花鏡でした。 瑞鳥紋八花鏡 (図270 唐) 現在展示していません 飛ぶ鳥と花枝を主紋様とし、余白を活かしたすっきりとした鏡です。 ビジネスで渡航された際に香港の古美術店でこれを目にして購入されたそうです。ものづくりに関わる者として、その鋳造技術に関心を持たれたのが購入の動機だったと伺っています。古美術店とはその後も信頼関係を構築していき、さらに目を肥やしてコレクションを充実されました。 それら作品は兵庫県に寄贈・寄託され、多くの方々の目に触れる機会を得て、今日に至っています。 千石唯司氏が令和5年2月18日ご逝去されました。 これまでのご厚意に感謝申し上げますとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

青銅器の名前

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 秋季企画展「儀礼の器 商周青銅器」の会期もあとわずかになりました。 青銅礼器は、日常では見る機会もなく馴染みが薄いうえに、読み方も判らない難しい漢字の名前ばかりで近寄りがたい感を抱いてしまいます。 私も展示担当として青銅礼器に接してきましたが、準備の最初の段階で難儀したのがこの名前でした。最近でこそパソコンも学習したので原稿の入力作業も楽になりましたが、当初はほぼすべて手書きで入力していました。 素紋斝(すもん か ) 商時代前期 当館蔵 企画展展示中 獣面紋卣(じゅうめんもん ゆう )  卣:酒を容れて持ち運ぶ器 千石唯司氏所蔵 企画展展示中 獣面紋方彝(じゅうめんもん ほうい )  千石唯司氏所蔵 企画展展示中 難しい名称の代表格は「彝」(い)でしょう。青銅礼器の総称を「彝器」(いき)とも呼び、祖先を祀る宗廟に常備された器を意味します。 青銅礼器の多くは、使用されていた商周時代に実際どう呼ばれていたのかわかりません。 今日用いている名称は、戦国時代(紀元前5~3世紀)以降の研究者が古典を読み解き、古典に表われる器の名前と青銅礼器を対照させて当てはめたものです。中にはおかしいと思われるものもあるようですが、多くはそのまま用いられています。 数少ないですが、器に銘文があり、そこに器の名前が記されているものがあります。 方格乳釘紋簋(ほうかくにゅうていもん き )   千石唯司氏所蔵 企画展展示中 この器の内面底部(見込み部分)には銘文があります。 「伯作寶𣪘」の銘 銘文は、 「伯作寶𣪘」の 4文字だけの短文ですが「伯が宝の 𣪘 (き)を作った」という意味で、伯という人物がなんらかの記念に𣪘を作ったということを子孫に知らしめるために記したものと考えられています。 この器は現在「 簋」と呼ばれ、銘に記された器の名前は「𣪘」で、文字は異なります。しかしどちらも同音の「き」です。 この器に関しては、少なくとも西周時代の人々も「き」と呼んでいたことがわかります。 今回の展示では、ケースのガラス越しですが、のぞき込むと銘文を見ることができます。 受付で貸し出している懐中電灯を使用したら、銘文はもう少し見やすくなると思います。 ぜひこの機会にご覧下さい。

商時代の鏡

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 当館では秋季企画展「儀礼の器 商周青銅器」を3月12日まで開催中。商周時代の青銅礼器26点を展示しています。あわせて二里頭文化~商時代(紀元前17~13世紀)の銅鏡3面も関連資料としてご覧いただけます。今回はその中の1面、鋸歯縁鏡を紹介します。 鋸歯縁鏡  図2 商(殷) 鋸歯縁鏡は周縁がノコギリ歯のようになっているのが特徴。鏡背面の中央に小さな鈕(ちゅう)があり、後の時代に続く銅鏡の基本形が見られます。鏡背面は同心円状に区画され、矢羽根状の紋様と十字状の透かし孔が巡ります。 この鏡は透かし孔があり、鏡面が研磨されていません。姿見として用いたとは考えがたく、どのように使用したのか謎です。 商周時代はまだ制作される銅鏡の数が少なく、青銅礼器のように王が行う儀礼の場で用いられることもなかったようです。 ぜひ、この機会に青銅礼器とあわせてご鑑賞ください。

青銅礼器とその紋様

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 古代鏡展示館では、企画展「儀礼の器 商周青銅器」を開催中(3月12日まで)。商周時代の王らが行う儀式の中で用いられる青銅礼器を展示しています。これら作品は遠い昔の中国のものなので、馴染みにくい印象をお持ちかもしれません。しかし、青銅礼器の形やそこに表わされた紋様は今日まで通じるものがあります。近隣の神社や寺院を巡った際に目にした事例を紹介します。 寺院の本堂前に置かれた香炉 香炉は三足で器形も青銅礼器の 鼎 (てい)に似ています。胴部にある逆三角形の紋様は、青銅礼器に表わされている、再生の意味をもつとされる 蝉紋 (ぜんもん)そのものです。 胴部に 蝉紋 が表わされた 鳥紋鼎 (商後期) 企画展「儀礼の器」にて展示中 千石唯司氏所蔵品 神社の屋根を覆う瓦 鬼瓦 と 軒桟瓦 (のきさんがわら)(軒先を飾る瓦)、 鳥衾 (とりぶすま)(棟上に突出する円い瓦) 鬼瓦は大きな角とにらむ目が特徴です。その姿は商時代の青銅礼器の多くに表わされた 獣面紋 ( 饕餮 (とうてつ) 紋 )にも似ています。鬼瓦の起源は5世紀頃の中国にまで遡りますが、青銅器の獣面紋は西周時代(前10世紀)以降衰退するので、両者は直接関連しません。 鬼瓦も獣面紋も魔除けの役割があるとされ、人間が見えない魔物と対峙するうえで、にらむ目と威嚇する角は必要不可欠なデザインだったのかもしれません。 獣面紋鼎に表わされた 獣面紋 (商末~西周初期) 企画展「儀礼の器」にて展示中 千石唯司氏所蔵品 軒桟瓦や鳥衾には 巴紋 (ともえもん)が表わされています。巴紋は日本では平安時代以降、瓦や武具などの装飾として多用されます。 商代の青銅礼器の中には、丸や四角の渦巻き紋様が見られます。これらの紋様は気のエネルギーを表わすとも言われます。丸い渦巻き紋様は 円渦紋 (えんかもん)と呼ばれ、巴紋に似た紋様ですが、こちらも時代の空白と地理的な隔たりがあるので両者が直接関連するとは考えられません。 獣面紋卣(ゆう)に表わされた 円渦紋 (商後期) 企画展「儀礼の器」にて展示中 千石唯司氏所蔵品 中国社会に強い影響をもつ儒教は、青銅礼器が隆盛していた西周時代の社会を理想としました。儒教を学ぶうえで、青銅礼器は理想とする時代を象徴するものとして、研究対象として重要視されました。儒教は周辺地域の日本にも伝わり貴族や武士の教養として長く影

花クイズウォーキングラリーと古代鏡展示館オリジナル缶バッジ

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みなさま。お元気でお過ごしでしょうか? 現在古代鏡展示館は、令和4年度冬季スポット展示『干支 卯(う/ボウ)』を開催しています。 また、古代鏡展示館は1月2日より開館し、兵庫県立フラワーセンターのお正月特別開 園のイベント「花クイズウォーキングラリー」に参加しています。(※1月4日水曜日まで) クイズに全問正解すると、フラワーセンター・古代鏡展示館の共通特別招待券1枚や、お子様にはフラワーセンターオリジナル缶バッジと古代鏡展示館オリジナル缶バッジのどちらか1つがもらえます! ※缶バッジの数には限りがありますのでご了承ください。 古代鏡展示館オリジナル缶バッジデザイン 「干支 卯」バージョン 古代鏡展示館オリジナル缶バッジ集合 「干支 卯」バージョン 今回の当館のオリジナル缶バッジのデザインは、現在冬季スポット展示『干支 卯(う/ボウ)』で活躍中の「月宮図鏡」(当館所蔵)に表されたウサギをモチーフとしています。 その姿は、月の中の兎が壺の中を搗(つ)いて不死の薬を作っている様子を表しています。 「月宮図鏡」に暮らす働き者のウサギさん 働き者のウサギさんの名前はわかりませんが、その月の兎の姿を漢字4文字にすると、 「白兔搗薬(はくととうやく)」〈白兔、薬を搗(つ)く〉 と表されます。 (※漢字テストには出てこないと思います。) 西晋時代の傅玄(ふげん : 217年〜278年) が『擬天問』(『太平御覧』巻四所引)で「月中 何かある、白兔 薬を搗く」(月中何有 白兔搗薬) と詠じたところがもとになっています。後の時代には、白兔(はくと)が玉(ぎょく)のような色をしているところから「玉兔(ぎょくと)」とも呼ばれ、月の代名詞となっています(袁珂1999)。 ※玉(ぎょく):美しい石、宝石、おもにヒスイ ※ちなみに当館では玉で装飾した鏡も展示しています。 白玉象嵌獣紋鏡 (図録95)【 寄託品】 (前漢/紀元前2世紀) 直径9.3 cm/重140g 是非、クイズウォーキングラリーにご参加いただき、当館にもご来館ください。 ●兵庫県立フラワーセンター お正月特別開園  2023年1月2日(月)~1月4日(水)  開園時間:9:00~16:00(最終入園は15:00) ●古代鏡展示館 令和4年度冬季スポット展『干支 卯(う/ボウ)』 令和5年1月2日(月)~3月12日(日)  20

令和4年度冬季スポット展 「干支 卯(う/ボウ)」がはじまります。

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みなさま。新年明けましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 古代鏡展示館は、2023年1月2日(月)より開館し、 同日より 令和4年度冬季スポット展 「干支 卯(う/ボウ)」を開幕 します。 今回の展示は、 令和5年の干支(えと)、「卯」・「兎(うさぎ)」・「🐇」 が表された鏡、 『月宮図鏡(げっきゅうずきょう)』(図録番号289) を取り上げます。 本鏡は、円形の鏡を満月に見立て、その鏡背に月にまつわる古代中国の伝説を図像で表現しています。 そこには、月の中にいる兎が表されます。 月宮図鏡のうさぎ 学校の飼育室の兎とは違い、少しワイルドで耳もやや短いですね。 本ブログでも何度も取り上げるほど話題の豊富な鏡ですが、 今回は「月の兎」に焦点を当てて展示・解説しています。 なぜ月の中に兎がいるのでしょうか? そんな疑問についても現地配布の解説資料にて触れています。 ※同資料では「えとって何?」と題して、「干支(えと)」についても解説しています。 令和4年度冬季スポット展  「干支 卯(う/ボウ) ―仙薬を搗く月の兎―」 開催期間は、令和5年1月2日(月)~3月12日(日)です。 関心をお持ちの方は是非ご来館いただき、実物をご覧ください。 なお、当館は「月宮図鏡」を 「ミュージアム干支コレクションアワード2023 兎」 にエントリーしています。 様々なミュージアムから集う「卯/うさぎ」が入った館蔵品の中から好きなものを見つけて、1票を投じるというものです。 「ミュージアム干支コレクションアワード2023 兎」 投票期間は、令和4年12月13日(火)15:00~令和5年1月26日(火)15:00まで。 よろしければ、当館の「月宮図鏡」に1票を投じ、応援メッセージをいただけると大変励みになります。よろしくお願いいたします。 (K)