ああ夏休み

梅雨が明け、8月が始まりました。
フラワーセンターでは騒がしくセミが鳴いていますが、今年は虫かごを持った子供たちの姿をみかけません。まだ夏休みが始まっていない学校も多く、地域の夏まつりや花火大会もない、フラワーセンター恒例のイルミネーションもない、静かな夏が過ぎています。

当館で数多く展示している海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)は、古代中国の人々がシルクロードの彼方にある楽園をイメージしたと考えられる鏡です。ライオンをモデルにしたおめでたい獣である海獣、ブドウ唐草、鳥などが鏡背面にぎっしり描かれています。
海獣葡萄鏡(唐 図220)
よく見るとチョウ、ハチ、トンボなどの昆虫が描かれた鏡もあります。

海獣葡萄鏡(唐 図226)
中には小さくセミが描かれた鏡も。(真上からやや左に横向きに描かれています)

現代の私たちが見ると、海獣葡萄鏡にはトンボ、セミ、ブドウなど夏の魅力が凝縮されているように思えます。
海獣葡萄鏡(図220)に描かれたトンボ

紋様のうち羽根のある鳥や昆虫は、飛ぶことで天に通じ、昆虫が幼虫→サナギ→成虫と変化する姿は不死や再生を象徴する、と考えられています。一方で、隠し絵的に描かれた姿は職人の遊び心だとの説も。個人的にはこの説が好きですが。

今回紹介した鏡は、古代鏡展示館正面奥の海獣葡萄鏡コーナーで展示しています。
唐の時代に数多く制作され、日本にも持ち込まれた海獣葡萄鏡。鏡背面の紋様をしっかり観察したら、何か発見があるかもしれません。